ウェルビーイング経営 × 新しいモデル

ウェルビーイングな未来の会社経営について語ろう

10月14日(土)、スペシャルセッション「ウェルビーイングな未来の会社経営について語ろう」をKOTELO(立山町芦峅寺)で開催しました。会社で働く一人ひとりが、いきいきと自分らしくやりがいを持って能力を発揮することで、中長期的な会社の成長に繋がる未来の会社経営の在り方とは。先進的に取り組む経営者が語り合いました。

上原大輔

株式会社西軽精機 代表取締役社長

衣川由希子

合同会社MIRAIASOBICLUB 代表

東出悦子

株式会社アイペック 代表取締役社長

張田真

ハリタ金属株式会社 代表取締役

経営者が考える「ウェルビーイング経営」とは

 まずは「ウェルビーイング経営って何?」をテーマに自由闊達な議論が繰り広げられました。ハリタ金属の張田さんは、サプライチェーンに入っていくためには「経営のなかにウェルビーイングの要素を入れなければならない時代になった」と説明。「社員に幸せや生き方の柱を持ってもらうことは、経営者の役割でもある」と話しました。

 長野県佐久市で西軽精機を経営する上原さんは、10年前に読んだ書籍「日本でいちばん大切にしたい会社」がきっかけでウェルビーイング経営に取り組むようになったと説明。本から教わったことが多いといい、「私にとってのウェルビーイング経営は幸せ経営であり、従業員とその家族を一番に考えた経営だ」と自社の取り組みを交えながら説明しました。

 アイペックの東出さんは「選ばれる会社、優秀な人材が集まる会社にすることが、持続可能な経営には必須」とした上で、魅力的な会社には働きやすいこと・働きがいがあることの2つが重要ではないかとの考えを示しました。実際に働きがいを感じてもらうための取り組みとして、資格取得に向け自習する社員に対し、一定条件で手当を出していると紹介。その結果、仕事終わりに自習する習慣が生まれ、資格試験の受験者数は3倍に増加したといいます。

 また、ウェルビーイングの実現に向けた各社の具体的な取り組みについて、張田さんは「幸せとは何か」を社内で可視化するために「ウェルビーイングを、WHOと同様の『肉体的にも、精神的にも、社会的にも満たされた状態』と定義した上で、肉体面(健康経営)や精神面(ハラスメント防止やメンタルチェック)、社会面(SDGsや社会とのつながり)などに因数分解してKPIを設定。それを達成するための具体的な仕組みを作っている」と、ウェルビーイングに対して論理的かつ数値化しアプローチしていることを紹介。

 上原さんは「福利厚生の充実」を挙げ、有休消化率90%目標や、35歳以上人間ドック全額補助、社員全員で就業規則を作る取組みや、仕事が終われば定時よりも1時間早く退勤できる制度を設けたことを説明。衣川さんの「なぜそこまでして社員に働きやすさを提供しているのか」との問いに対して、「地域の中でこんなに福利厚生が充実した会社は他にない。そうなることでもし会社が危機に陥ったとき『会社がなくなったら困る』『自分が何かしないと駄目だ』と社員に思ってもらえる。自分ごとが会社ごとになるという効果があると思っている」と狙いについて話しました。

生産性が向上し、売上や利益にも繋がる

 2つ目のテーマは「なぜ今ウェルビーイング経営が必要なのか」。東出さんは労働力人口減少の観点から、選ばれる会社、人が辞めない会社になるために必要だと回答。上原さんは「問題となっている人手不足、生産性の低さ、幸福度の低さ、自己肯定感の低さは、これまで幸せ経営をしてこなかったことが理由。日本の課題を解消できるのは会社であり、すべての中小企業が幸せ経営をしたら日本はとてもいい国になる」と力説しました。

 張田さんは「経営者が『あなたを幸せにします』と言い切ることが大事」と言い、その理由として「言い切った後は、もうやらなければいけない。これからの時代、会社を成長させていくエンジンは間違いなくここにあると思っている」と述べました。また、ウェルビーイング経営をすることで「社員が自主的に動くようになり、生産性が上がる。ゆくゆくは売上や利益として結果が表れる」と言及。衣川さんが「従業員の変化や売上など、成果として感じられるまでどのぐらいかかったのか」と質問。張田さんは「下積み期間は長かった。求めていた組織になったのは最近で、約10年はかかった」と一定の時間がかかったことを紹介しながらも、「大きな成果がなくても焦らないことが大切。小さな成果の共有は明日からでもできる。幸せはなるものではなくて感じるもなので、小さな毎日のステップアップを幸せと感じることができれば理想」と話しました。

各社の事例を共有する仕組みが必要

 最後に「ウェルビーイング経営はどうしたら広がるのか」について議論。上原さんは、会社の規模感によるとした上で「当社は30人規模の会社ということもあり、次の年から結果が出始めた。生産性も上がった。経営者が本気でやればすぐ成果は出る」と強調。東出さんは「皆さんもさまざまな施策に既に取り組んでいると思うが、それがウェルビーイングに繋がると意識しているかどうかが大切。ウェルビーイング経営について情報収集したり、このような場に参加するのも一つだと思う」。張田さんは「富山県がウェルビーイングを掲げている時点で、既に(ウェルビーイング経営が広がる)素地はできている」とした上で、「いろんな企業の取り組み事例を共有するような仕組みをつくっていけば良いのでは」と提言しました。

 最後にウェルビーイングな会社経営に向けて、すぐに取り組めるアクションについて一人ずつ発表。上原さんは「経営者がずっと笑顔でいること」、東出さんは「ありがとうの気持ちを持ち、丁寧に一人ひとりに挨拶をすること」、張田さんは「経営者が自ら勉強したことを社員にシェアをしていくこと」。明日から実践できるウェルビーイング経営のヒントが散りばめられた有意義なセッションとなりました。