地域産業 × 新しいモデル

「クリエイティブ」を活用したものづくり企業の成長戦略

10月15日(日)、スペシャルセッション「『クリエイティブ』を活用したものづくり企業の成長戦略」をKOTELO(立山町芦峅寺)で開催しました。先行きが見えない時代の荒波を乗り越えていくために、ものづくり企業に求められているものは何か。クリエイティブな発想による、オンリーワンの製品開発や、未知の領域への事業転換など、先進事例からものづくり企業が新たなチャレンジの一歩を踏み出すためのヒントを探りました。

岩本健嗣

富山県立大学 工学部 情報システム工学科 教授

梶川貴子

株式会社フジタ 代表取締役

島田亜由美

株式会社杉山製作所 代表取締役

林千晶

株式会社QO 代表取締役社長

ものづくり企業は社会に開くことが重要

 まず、ものづくり企業として先進的な取り組みを行う島田さんと梶川さんが、会社が大きく変わるきっかけになった出来事を語りました。

 岐阜県関市の鉄家具メーカーで社長を務める島田さんは、バブル崩壊が転換のきっかけになったと言い、「製造が海外に移管されたり、コストを下げる交渉があったりして、売上が最盛期に比べて約3分の1に落ちてしまっていた。その状況を『何とかしなければ』というところからスタートした」と説明。BtoBからBtoCへ舵を切った理由については、「受けている仕事に未来がないことが明確だった。自社で製造して価格が決められるのは大きい」と、BtoC事業に取り組むことのメリットを話しました。

 アルミ鋳造金型などを製造する工場内にミュージアムを立ち上げた梶川さんは、代表に就任後、会社の次なる柱を探し求めてイノベーションスクールを受講。「美しいミュージアムをつくりたいと言ったら実際に動くことになり、クラウドファンディングで目標を達成。(ミュージアムを)つくらざるを得ない状況になった」と説明しました。

 変化の内容やきっかけこそ違うものの、創業者の父から下請け中心の会社を継ぎ、変化を起こしたという点では共通している島田さんと梶川さん。2人の話を聞いて岩本さんは、「会社と社会との関係は少しづつ変わっていくが、『まだいける』という発想で『茹でガエル』になってしまう企業が多い。また、リーマンショックやコロナ禍などの大きなインパクトがあっても、事業の変化の幅が少ない」と、県内企業の現状を危機感をもって語りました。また、林さんは、数々の中小企業を見てきた経験から「時間の移り変わりとともに事業の変化が必要だが、なかなかそれが難しい。会社が変化できるタイミングは不況と代が変わるときだけ。2人とも大切なタイミングを逃さなかったのだと思う」と変化を起こせたポイントを話しました。

 続けて「『こういうことをやっている会社がありますよ、それを支援してくれる人は一緒にこの会社を成長させてくれないか』といった形で、“社会に対して会社を開く”ことが必要。現代の経営者は、たとえ下請けだとしても社会に開かないといけない」と林さんは主張。島田さんと梶川さんの事例も、業態を変化させたことより、社会に対して開いたことが重要だったと評価しました。

製造業が取り組むべき「デザイン経営」

 富山県で行った令和4年度のウェルビーイング県民意識調査の結果から、職場に対して「愛着や誇りがある」「成長するための学びや経験ができる環境がある」「夢や目標を実現できる場である」という設問を職業分野別に見ると、「製造業は他の分野に比べて『いいえ』側が多い結果だった」とモデレーターの岩本さんが解説。この結果も踏まえて、ものづくり企業にどうクリエイティブを活用していくべきなのか。

 これまで数々のプロジェクトで中小企業のデザイン経営を推進してきた林さんは、「いままでの経営」と「これからの経営」の2つに分けて、デザイン経営の根底にある考え方を紹介。「いままでの経営は不満を解決するという意味で『技術』が大切だった。これからの経営は『デザイン』。(商品やサービスのことを)どう伝えるのかや、そもそも人は何に喜びを感じるのかということを考えないと経営していけない」と話しました。

 また、現代は「私たちの生活が満たされている」とした上で、何かを選択するときのポイントが「技術ではなくデザインの領域になっている」と説明。「いままで製造業はつくることだけに特化できたが、これからは製造業こそがクリエイティブに取り組んでいかなければならない」と強く呼びかけました。

ものづくりに誇りを持ち、挑戦していく

 変化の激しい時代のなかで、これから会社をどうしていきたいか。梶川さんは「日本の製造業はマーケットが縮小していくと思っている」とした上で、「ものをつくる力よりも、アイディアをつくり出す力の方が大事になる」と考えを述べました。一方で「現場があるからこそものをつくれるので、ものづくりの現場は大事。現場を現状維持しつつ、社員も私もさまざまな新しいことにチャレンジし続けられる会社にしていきたい」と力を込めました。

 島田さんは「職人がかっこいいということを伝え続けたい。ものづくりの現場や職人を見て『杉山製作所の商品が欲しい』と言ってくれる人を国内外に増やしていきたい」、「会社を大きくするというわけではなく、職人たちがちゃんと好きなものづくりをできるような環境をつくっていきたい」と語りました。また、近年は社内プレゼンに力を入れているといい、「会社がどうありたいのかをしっかりと社員に伝えることが経営者の役割であり、デザイン経営にも繋がるのでは」と提言。経営者が一歩を踏み出すための具体的なヒントも示され、有意義なセッションとなりました。