ミニセッション

時代が求める「新しいインフラ」とは何か?

10月14日(土)、ミニセッション「時代が求める『新しいインフラ』とは何か?」をKOTELO(立山町芦峅寺)で開催しました。求心力のあるまちづくりのために、地元住民・観光客だけでなく、さまざまな形でその地域と関わりを持つ人が集うコミュニティの場=「ニューインフラ」をつくっていこう。土地の歴史風土が反映された地域資源を新たな視点で活用した様々な事例を知る呉さんと、広島・瀬戸田で実践する岡さん。お二人の新しいインフラづくりの視点やその想いをシェアし、次の一手を発想する場をつくります。

岡雄大

Staple Inc. CEO

呉琢磨

株式会社ユーザベース NewsPicks Re:gion編集長

幸せ人口1000万を実現させる「受容性」

 今回のテーマについて考える上で、「新しいインフラ」を定義することから議論が始まりました。まず、モデレーターの呉さんはインフラという言葉に対して、「行政がつくってくれるものだというイメージがある」と指摘。富山県が掲げる幸せ人口1000万のビジョンを実現するためには、地元の人たちも一緒にインフラをつくっていかなければならないと投げかけました。これに対して岡さんは「官主導のインフラを享受していた時代から、民間が意志を持ってインフラづくりに参加できる時代になった」と、新しいインフラに対する自身の前向きな捉え方を紹介しました。

 岡さんは、日本全体で人口が減っていくことを前提とした場合、「地元住民と観光客の間の『ニューローカル』な人たちがこれからの地域を作っていく」。つまり、地域の外から新しく来る人こそが、新しいインフラを考える上で重要だと説明。地域側は「ニューローカルをどれだけ喜んで受け入れ、活用できるかが非常に大事」と話しました。

 では、富山における「新しいインフラ」とは何なのか。岡さんは「幸せ人口1000万に向けた『受容性』を生むもの」だと提言。続けて「面白い人が集まるコワーキングスペースをつくるといった話は、どちらかと言えばインフラ概念の各論になる。そうではなくて、地域として1000万人が関わっても幸せである状態や、1000万人を受け入れられるくらい受容性の高まった地域をつくるということ。受容性そのものがインフラであるという捉え方もできる」と解説しました。

地域の役に立ちたい人に「余白」を見せる

 新しいインフラを「受容性」だと定義したとき、「瀬戸田は最初のハードルが低かった」と岡さん。3施設をオープンするにあたって雇用した60名のうち35名が移住者だったといい、「人口減少が進む瀬戸田に元気のいい若者が移住してきた状況を、地元の人たちがありがたがってくれた」と、幸運なケースだったことを明かしました。

 さらに瀬戸田での取り組みを振り返って、「(従業員の)副業を全面的に許可したことが非常に良かった」と分析。それを受けて呉さんが「地域のなかで35人が副業をしたら、入ってくる情報量やチャンスが35倍以上に広がる」、「単なる『ご近所さん』ではなく一緒に働くことがとても重要なのかもしれない」と、地元住民と新しく来た人が協働することの重要性に言及しました。

 また、新しいインフラのハードルについて、心理的側面から次のように語りました。

 「基本的に人は誰かの役に立ちたいと思っている。観光で行った先で役に立てた瞬間、そのまちは他人事から自分事になる。新しいインフラのハードルとは、受け入れる地域側が役に立ちたいと思ってる人たちに対して『役に立てそうな余白』をどれだけ見せられるかということ。そこが上手にはまったとき、移住などに繋がるということを瀬戸田で感じている」(岡さん)

「副業」が関係人口のきっかけになる

 富山で暮らす一人ひとりが新しいインフラになるための一歩とは。岡さんは「役に立ちたい人を、役に立たせてあげること」が大事だと、今回富山に訪れて感じたことを交えながら繰り返し強調。また「自分の知っている誰か、あるいは知らない誰かを呼び込んで一緒に活動してみること」が、幸せ人口1000万の実現に繋がるのではないかと語りました。

 最後に呉さんは、岡さんの事例も振り返りながら、関係人口を増やすための仕組みとして「副業」が一番わかりやすく効果的だと説明。「副業したい人、どうせなら地域でやりたいと考えている人が都市部で特に増えている」とした一方で、「副業を受け入れる企業側が全然増えていない」と紹介。11月に東京で開催する越境副業のイベントを告知しながら、副業を受け入れる体制を整えてほしいと県内企業に呼びかけました。